15 Nov 2018
4年ほど前に書いた脚本ですが、手を入れようと思うので、前半5分ほどの部分を公開します。
ご興味のある方は、続きなどはご連絡いただければお送りできると思いますので!
では、どうぞ。
『クリスマスにミステリーを』
登場人物:
加藤秀一 43歳
怪しげな高級バッグの訪問販売をしている。
気障で気取っているがコンプレックスが強い。
人からおだてられるとすぐその気になる。
健康オタク。
テレシータ・レイエス 26歳
不法就労しているフィリピーナ。
秀一の愛人。
お金を貯めて、将来は国でメイドカフェをやりたいと考えている。
日本人男性は若い女の子が好きだと思い込んでいるので、時々、歳を12歳だと嘘をつくが、すぐにバレる。
加藤順子 46歳
秀一の妻。
お嬢様育ちなのでおっとりしているが、かなりわがまま。
おしゃれなカフェを経営したいので、開店費用を手っ取り早く稼ぐ方法を考え中。
詰めが甘い。
河村武 40歳
ニーズにあわせてどんな芸もやっているちんどん屋だが、ニーズをつかみ切れていない。
お調子者でいつも元気だが、時々打たれ弱い。
順子の友人で、彼女に好意を抱いている。
谷口麻子 48歳
鈴香の母。
武、鈴香と共にちんどん屋をやっている。
武に好意を持っていて女房気取りだが、武には相手にされていない。
谷口鈴香(りんか) 18歳
麻子の娘。
無口で無表情だが、水戸黄門のお銀をこよなく愛していて、お銀の話をすると人が変わったようになる。
———-
クリスマス。京王プラザ八王子のスイートルーム。
部屋にはクリスマスの飾りつけがされていて、花の飾られたテーブルがある。
ドアが開くと、季節感を無視したアロハシャツを着た加藤秀一と地味なワンピースを着たテレシータ・レイエスがこそこそと入ってくる。二人とも手には手袋をしており、テレシータはキャリーバッグを引いている。
ドアを閉めると見つめ合い、激しく抱き合う二人。
テレシータが無言で荷物からワインの瓶を取り出し、テーブルにセットし始める。
横では秀一が部屋の鍵(シリンダー用の鍵)をテーブルに置き、電話でどこかへかけ始める。
秀一「もしもし。あ、俺。今、どこ?」
テレシータが窓を開けようと窓枠を探るが、どこにも開けるところがない。何故か焦るテレシータ。
秀一「……うん。お前の好みだろ、あの服。……いや、だからプレゼントだよ。……そんなんじゃないって。欲しがってたから、クリスマスだし」
どうにか窓を開けようとしているテレシータを電話しながら不審げに見る秀一。
秀一「……そう、クリスマス。それ着てさ、京王プラザホテルに来いよ。1035室。部屋とったから。……クリスマスディナー、頼んだからさ、二時間後くらいに。……たまにはいいだろう? 特別なクリスマスがいいって言ってたじゃない。……うん。じゃあ、後で。待ってるから。……必ずその服着てこいよ。……ああ。じゃあな」
電話を切る秀一。
テレシータは窓をガンガンとたたき始める。
秀一「おい、何やってんだよ」
テレシータ「窓、開かない」
秀一「十階なんだから当たり前だろう」
落胆するテレシータ。
秀一「あと二時間あるから、着替える時間はあるよな」
テレシータ「大丈夫。ここで別の服に着替えて、二時間後にまたこの服で戻ってきてロビーで三時間お茶飲む。それでいい?」
秀一「ああ。俺はあいつを待って、来たらバスルームでやるから。……この瓶で殴ったら死ぬかな?」
テレシータ「わかんない。奥さん、石頭?」
秀一「知らないよ、そんなこと」
テレシータ「死ななかったら何回も殴ればいい」
秀一「そ、そうだな……」
テレシータ「終わったら、シュウさんは着替えてアリバイつくりね」
秀一「ああ……」
テレシータ「大丈夫?」
秀一「……大丈夫だ。これで使い込んだ金も返せるし、テレシータとも結婚できる」
テレシータ「嬉しい。(秀一にしなだれかかって)結婚したら、メイドカフェやってもいいでしょ?」
秀一「もちろん」
なんとなく盛り上がって、再び抱き合う二人。
突然、ドアチャイムが鳴る。
ぱっと離れる二人。
秀一「……おい。何か頼んだか?」
テレシータ「この部屋で電話使ったの、シュウさんだけね」
秀一「……誰だよ」
テレシータ「わかんない」
秀一「……一応隠れてろ」
テーブルの下に隠れるテレシータ。
ドアを開けに行く秀一。
河村「チャンラーン!」
突然、ブブゼラを持って全身白タイツに白手袋、天使の羽を背負った中年男性が飛び込んでくる。
河村「サプライズですよー!」
秀一「(慌てて追いかけてきて)おい、なんだよお前」
河村「(気にせず)あれー? どこかな、順子ちゃーん?」
河村は順子を探し始める。更に慌てて河村を止めようとする秀一。
秀一「おい、止めろ。何してるんだ」
河村「(秀一に向き直り)あ、あなたが甲斐性なしで浮気者の旦那さんですか?」
秀一「はぁ?」
河村「さっき順子ちゃんを見かけたから追いかけてきたんですけど……」
秀一「人違いだ。帰ってくれ」
河村、テーブルの下のテレシータを見つける。
河村「あ! ここにいましたねー? ……あれ?」
テレシータを見て人違いに気づく河村。
テーブルの下からテレシータが出てくる。
秀一「だから人違いだって言っただろう?」
河村「(テレシータに)あなた、順子さんじゃないですよね?」
テレシータ「あたし、そんな女じゃないね」
河村「あ、そうか! (秀一に向かって)さては愛人ですね?」
秀一「失礼な! 何を根拠に」
河村「だって順子さんに似た女性だけど順子さんじゃない。こんなホテルに二人きりで……あやしい」
秀一「普通それは別人だと考えるだろう?」
河村「それにあなたはいかにも浮気性で甲斐性なしといったいでたちですし」
秀一「余計なお世話だ」
河村「また順子ちゃんが俺の手を取って、涙ながらに女の人生について語る姿が目に浮かびます……」
秀一「お前は順子とどういう関係なんだ!」
テレシータ「シュウさん!」
秀一がしまったという顔をする。
するとまたドアチャイムが鳴る。
秀一「あー……とにかく、心当たりのない話だから帰ってもらおう」
言いながらこの場から逃げるようにドアを開けに行く。
麻子「ちょっとあんた、こんなところに何の用よ!」
突然、『七年目の浮気』の白いモンロードレス、金髪のウィッグ、レースの手袋をした中年女性が駆け込んでくる。
河村「やべっ」
麻子「順子って、どこの女よ!」
麻子が河村を追いかけまわし、テーブルを挟んで河村が逃げる。
不思議そうに部屋に戻ってくる秀一。
麻子「(テレシータを指さし)この女なの? こいつが順子なの?」
河村「違う違う! 順子ちゃんはこんなにケバくない!」
テレシータ「どういう意味!?」
河村「(女性二人に向かって)待て、話せばわかる!」
麻子「あんたはそんなことばっかり」
秀一「(ぼそりと)甲斐性なしの浮気者って誰のことだよ……」
テレシータ「あたしはケバくないね!」
河村・麻子「ケバい!」
テレシータ「チクショウ!」
秀一「おい、シータ、やめろ」
—–(ここまで)
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